水虫

塗り薬について

水虫用の塗り薬はかぶれ易い傾向があります。ですので、赤くなったり、痒くなった場合は中止いただき、その旨をわたくしにお知らせ下さい。この関連で以下のお願いを呼びかけています。
「水虫だと思って」市販ないしは家族に処方された「水虫の薬を塗っているが良くならないので来た。」というケースが少なからずあります。水虫の治療の最善の道筋は、患部より操取した皮膚内に水虫の原因となる菌糸等の存在を確認し、その結果を受けて水虫の薬を処方することです。しかしながら水虫の薬を既に用いていらっしゃる場合は、表層のカビが急激に減少してしまうので、実は水虫であったとしても、確認するのに陽性率が低下してしまいます。そもそも水虫の治療にカビの菌糸の確認がどうして必要かと申しますと、当然類似疾患との鑑別も大きな目的ですが、その診察日にはカビが居たという事実が後の治療に大きな影響を与えるのです。一般的に言って水虫の塗り薬は、かなり高い確率でかぶれる傾向があります。よってわたくしの患者さんにもかぶれてしまう方が出てくる訳ですが、この時初診時に菌糸を確認している患者さんには、自信を持ってかぶれの治療を施行後、また新たな水虫の薬を処方することができますが、一方確認がなされていない場合、本当に水虫であるのかわたくし自身確信を持てませんから、かぶれの治療を施行後、再びかぶれてしまうかもしれない水虫の薬を処方することにためらいを覚えてしまうのです。そこで患者さんにお願いしたいのですが、水虫を疑ってご受診なさる場合は、水虫の薬は用いらずにいらっしゃるか、既に用いている場合は、7日以上塗るのをストップした上でご来院いただきたいのです。

次に水虫用塗り薬の開発の歴史に触れ、その結果生じる事象を紹介します。現在の抗真菌外用剤の端緒となったのが、1970年代初頭に発売されたクロトリマゾールです。クロトリマゾールの特長は低刺激である点、水虫の原因真菌である白癬菌以外にも、カンジダ・癜風菌に効果が高い点です。クロトリマゾールはイミダゾール系で、その後イミダゾール系薬剤が多数開発されました。その後は1日1回外用で済む方向での開発に移行し、ビフォナゾールが開発されましたが、抗真菌力はむしろ落ちてしまいました。そこでイミダゾール系以外の系統の薬品開発に展開し、テルビナフィン、ブテナフィンが発売されました。この2者の特徴は、白癬菌には良く効くのですが、カンジダ・癜風菌には効かない点にあります。その結果、原因真菌が白癬菌のみでない時、これを混合感染と言いますが、完全に治せない可能性があります。その他チオカルバミン酸系のリラナフタート、モルホリン系のアモロルフィンがあります。

のみ薬について

水虫、特に爪も侵されている場合には飲み薬が必要なことは、製薬会社のPR等に依り大分知られるところとなりました。水虫用抗真菌内服剤は、1960年代半ばから長らく使用されてきたグリセオフルビン(現在は製造終了)に加えて、イトラコナゾール、テルビナフィンが相次いで発売されました。これら2種の特長は、グリセオフルビンが静菌的なのに対し殺菌的である点です。静菌的ですと、かびをある程度まで押さえ込めても完全に殺し切ることができないので、例えば爪の水虫の場合、爪が完全に生え変わる期間飲み続けなければ、再発することになります。イトラコナゾール、テルビナフィンは殺菌的ですので、一定期間用いて戴けばOKです。内服期間については、2者の特徴において、一日内服量、また患者さんとの兼ね合いがあり、一定ではありませんが、概ね3~6ヶ月が目安となります。

抗真菌剤は細胞壁形成阻害が主たる薬効である為、同じ真核細胞で形成されている人間にも影響が出る可能性があります。特に肝機能障害が生じる可能性があります。と言っても2~3%の確率ですが。よって内服期間の途中で、血液検査を施行し、副作用が起きていない・起きていなかったことを確認する必要があります。

イトラコナゾールは、連日内服と言う、日本独特なものでしたが、途中からグローバルスタンダードである、まとめ飲み(パルス療法)になりました。

2018年に新薬が出ました。これはイトラコナゾールの改造版で、難点であった水への溶解性を解決した物です。

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